Saturday

110521

OVER THE BLUE / ENBULL


i Tunes

仙台出身のグループ、ENBULLの復興支援チャリティーソング。
Grooveman Spotの彼らしい美しくゆったりとしたトラックの上に、
U-ZIPPLAINの力強いラップがのる。

次々と吐き出される固有名詞の連なりからは、
自分の生まれ育った土地への半端ではない強い思い入れが感じられ、
一人の人間を通した場所の記憶が聴き手の頭の中でどんどん立ち上がってくる。

この曲は、楽団ひとり&KICK-O-MANの「NORTH EAST COMPLEX part 3.11」
のような切実さとは対照的に、
これから続くであろう復興にかかる長い時間を見据えながら、
少し肩の力を抜いてゆっくりとしかし確実に歩き出そうとする強い意志が感じられる。
(それはもちろんレコーディングの時期や
現在住んでいる場所にも因っていることなのかもしれないけれど。)

そして何よりも特筆すべきは、
この曲が今回の被害の最大の原因となった海について歌われている点で、
彼らをはじめ東北の人たちにとって海というものが常に生活のそばにあって、
どれだけ大きな存在であるかを今改めて感じさせられた。
そしてそのことから今回の震災および津波に対する複雑な感情をうかがい知ることもできる。
でも、だからこそ余計にそれでもなお海への愛情を口にするこの曲に感情を揺さぶられるし、
決して乗り越えることのできないものに対する畏怖と、
今回起こったことにもくじけることのない粘り強くしなやかな態度を感じさせられる。

当たり前のことだけれど、それまでずっと恩恵を被ってきた海が
一瞬とんでもなく鋭い牙をむいたとしても、
やっぱり海と向き合って生きていくしかなくて、
そのためにはこの曲のような大らかさをもって接していく必要があって、
結局のところそれは元々海から学んできたものなのかもしれない。
だから壊れてしまったものをまた少しずつ直したり新しく作っていったりしながら、
海との親密な関係を再び築いていくことになるんだなと思う。

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