Voice from Ishinomaki
彼らは石巻在住で、もちろん今回の震災で被災しているのだけれど、
そんな中13日後にこの曲を録ったらしい。
録った、と言っても携帯のボイスレコーダーを使ってのレコーディングで、
正直に言って録音状態はあまりよくない。
だけど今や誰でもある程度きれいに録ることができる中で、
そのことが逆に置かれた状況の切迫さを伝え、
この曲にさらなるクオリティを与えている。
クオリティというのは必ずしもテクニックによっているのではない。
このような状況で録音された、生身の身体を通じて発せられた声は、
何ものにも代えがたい記憶装置として私たちに届く。
震災から2ヶ月経った今も依然として問題は山積みで、
復興への道のりは長い。
そんな中で人々の精神状態はまちまちで、
音楽をやることに「不謹慎だ」と白い目を向ける人もいるかもしれない。
けれどそれでも彼らは声を上げずにはいられなかったし、
その衝動が曲を通じても強く伝わってくる。
自分にとっても「現場」という言葉がこれほど説得力を持って迫ってきたことはない。
ミュージシャンというのは音楽なしでは生きていくことのできないことを指すのであり、
そうゆう意味で彼らは真にミュージシャンたり得ていて、
彼らにとって生きることとラップすることはほとんど同義なのだと思う。
さらに注目をひくのは、この曲を作る上で、
彼らは、去年の夏に普天間基地移転問題が起こったときに,
移転先の候補地となった徳之島出身のOlive OilとPopy Oilが声をかけて、
Ill-BOSSTINOとB.I.G.JOEと一緒に作った曲、
「MISSION POSSIBLE」を参照していることだ。
このように社会の動きに対して、
「世間」という顔の見えない多数としてではなく、
個人が声を上げるということ、
しかも有事においてはどうしても政治的な言説が強くなって、
原理的な言葉が目立ってしまうのだけれど、
決して安易な結論を押しつけようとせずに、
どちらでもないどこかへ向かっていくことができるのは
音楽や広く芸術文化だからこそ可能なことだと思う。
そしてこういった声がいろんな結びつきを生み、
やがて大きなうねりへと育っていくのだ。
このような彼らの声が、
ひとりでも多くの人たちに届くことを願う。
Thursday
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